ホームページ制作を行う上で色について知っていた
ほうが、自分のレベルアップにもなるかと思い、
数年前に色彩検定の試験を受けました。
色彩検定2級の資格を持っているのですが、色彩検定の勉強の際、
直接は関係のない色の本も読みました。
その中で、いくつかの色彩を用いた実験のお話はとても興味深く、
面白かったので、今回、ご紹介させて頂こうと思います。
その前に
「色彩」とは、どういう意味でしょうか。
辞書で調べると
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「いろ。また、色のとりあわせ。色どり。色あい。」
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と書いてあります。
まあ、改めて書くほどの意味ではないかもしれませんが、
「色」と「色彩」の違いって何?と
思う方もいるかもしれませんので、一応書かせて頂きました。
「色」と「色彩」は同義語なので、意味合いは一緒ですが、
「色彩」の方は彩りや傾向などを指す言葉としての
使われ方が多いかもしれません。
意味合い的には一緒というのを
頭の片隅にでも入れておいて頂ければと思います。
では、早速最初の色彩の実験のお話をさせて頂きますね。
この記事の目次
■色が与える時間感覚の実験
まずは、色が与える時間感覚の実験のお話を
させて頂きます。
どの様な実験を行ったかと言いますと…。
【実験内容】ーーーーーーーーーーーーーーーー
①窓のない赤い部屋で会議を行った
②青い部屋で会議を行った
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結果はどうなったと思いますか?
①窓のない赤い部屋で会議を行った
実際の会議の時間は3時間程でしたが、
赤い部屋の会議に参加した人たちは
誰もが6時間くらい掛かったと言ったそうです。
②青い部屋で会議を行った
実際の会議の時間より半分くらいと
感じたと誰もが言ったそうです。
人は色彩をどこで見ているかと言いますと
・目
・皮膚でも見ている(感じている)
らしいのです。
皮膚でも見ていると言うのは、人の皮膚には光センサーがあって
よく「肌で感じる」という表現がありますが、
目とか心などで判断する以前に、色彩を皮膚が識別することが
あるようです。
色彩に「好き・嫌い」を感じるのは、
肌そのものも感じているからという理由もあるからなのです。
先程の実験では、部屋の色によって時間感覚の違いが出ましたが、
人は色彩によって心理的に影響されるというのが分かった結果でしたね。
・暖色系(赤や橙色)⇒時間が長く感じる
・寒色系(青や青緑)⇒時間が短く感じる
という色彩心理が働きます。
この色彩心理を利用して、
部屋の色合いなどを決定しているケースも多いようです。
例えば、時間の経過が長く感じられる方が良い時というのは、
好きな人と一緒にいる時などですよね。
結婚式場のじゅうたんが真紅なのは、
時間の経過が長く感じられる色彩心理の効果も
秘めていると言われたりしています。
逆に、時間の経過が短く感じられる方が良い時というのは、
日常の決まりきった仕事や単調な作業を行っている時ですよね。
なので、工場など、単調な作業を行う事が多い場所では、
色彩は寒色系を用いられることが多いようです。
単調な作業を暖色系の部屋で行ったら
精神的にキツイ結果になりそうですね。
■色彩が人間の感情に及ぼす力について
人は色彩を皮膚でも感じていることが分かりましたが、
「心・感情」にも影響を与えます。
赤色・橙色・黄色などの暖色系は、太陽や火をイメージさせる
色なので、心理的に暖かさを感じます。
青色・緑青色・青緑色などの寒色系は、水や空、氷などをイメージさせる
色なので、心理的に冷たく感じさせます。
ここからは、色彩の統計的調査の例としてあがっていた
様々な工場の問題点と、どのような解決策を実施したのかに
ついてのお話をさせて頂きます。
■統計的調査の例
ロンドンのある工場での問題点
女性従業員の欠勤が多く、原因は何なのか調査した結果、
工場の壁の色が陰気な灰色だったことが原因だったようです。
彼女たちが鏡を覗く度に、
自分の顔が病人のように映って見えていたのです。
これは青色光の仕業でした。
対策として、工場の壁を暖色系のベージュに塗り替えたら
青色光は中和されて、欠勤は減少したそうです。
別のロンドンの工場での問題点
機械の事故も多く、不機嫌な従業員が多い工場でした。
原因は、どうやら灰色の機械のせいだったようです。
対策として、機械を明るい橙色に塗った所、
士気が高揚し、事故は減少しました。
不機嫌だった従業員達が作業中に歌を歌い出すくらい
陽気になったそうです。
作業中に歌を歌うというのは、また別の問題を
引き起こしそうですが(笑)
でも、それくらい機械の色を変えただけで
人の心を明るくしたというのは面白い結果ですよね。
■色が与える温度感覚の実例
ある工場の食堂での実例をご紹介します。
その食堂は空気調節も良く、明るい青色の壁の部屋でした。
従業員達は21度の室温が寒いと言い、中には上着を着ている
人も居たそうです。
そこで、食堂の室温を24度まで高めてみました。
しかし、変わらず従業員達からは寒いと苦情が来ました。
原因は明るい青色の壁にありました。
対策として壁の色を橙色に塗り替えました。
すると、今度は24度では暑すぎるという文句が出たのです。
そして、食堂の室温を元の21度に戻した結果、
みんな満足するという結果が出ました。
色彩によって、人の温度感覚が変わるというのは
面白いものですよね。
その他にも、室温が高いという不平があった工場のお話ですが、
工場内の色を、明るい灰色、パステル調の緑色などの
寒色系を導入したところ、それだけで不満は解消されたそうです。
また、アメリカの工場では、
空調で室温は常に21度の設定に維持されていたのですが、
女性従業員達から「寒い」という苦情が絶えなかったそうです。
対策として、室温はそのままで、白い壁をくすんだサンゴ色に
塗り替えたところ、苦情はパッタリ止んだというケースも
あったそうです。
「色が与える時間感覚の実験」のお話の時に、
色彩に「好き・嫌い」を感じるのは、
肌そのものが感じているからとお伝えしました。
しかし「色が与える温度感覚」は、好き・嫌いなど関係なく
人に影響を与えます。
【暖色系】
実際に身体は暖まり、温度も上昇します。
つまり、体感温度が上がるという訳です。
【寒色系】
身体が寒く感じ、体感温度は下がります。
色彩によって、この様に人間の体感温度に
影響を与えるのですね。
■人の筋肉は光や色彩によって変わる
私達の筋肉というのは、光や色彩によって、
緊張や弛緩をくり返します。
この働きのことを「トーナス」と言います。
光の加減や色彩によって、体の筋肉が「緊張・弛緩」する現象を、
脳波や汗の分泌量から客観的に示した数値のことを
「ライト・トーナス値」と言います。
ライト・トーナス値が高いほど、筋肉が緊張します。
筋肉が一番ゆるんでいる数値は23で、
ベージュ系やパステルカラーの色と同等らしいです。
数値と色の流れを紹介しますと
一番弛緩した正常値23(ベージュ系やパステルカラー)
↓
青色24
↓
緑色28
↓
黄色30
↓
橙色35(筋肉が緊張、興奮に変わる数値です。)
↓
赤色42
赤色42が最高値になっていて、
血圧まであがってしまう数値となっているようです。
このことにより、人がリラックス出来る色彩というのは
ベージュ系やパステルカラーということになりますね。
■筋肉反応のテスト
G・ブライハウスという研究者が筋肉反応のテストを行った結果
赤色光のもとでは、筋肉の反応が12%すばやくなり、
緑色光のもとでは、筋肉の反応が遅れるという
テスト結果が出たようです。
赤色が筋肉に興奮を与え、反応が良くなるのでしょうね。
緑色だと、結構リラックスした感じの状態だと思うので
反応が遅れるのでしょう。
■色には感情がある
ここまでご紹介してきた実験や、統計の結果を見ても分かるように、
色は人の感情や働きに多大な影響を与えている事が分かります。
心理的な影響を与えますし、神経にも影響を与えます。
色によって、明るい気分にさせたり、リラックスさせたり、
暗い気持ちにさせたりします。
ここからは、「色」自体の色彩心理の働きを
色別にご紹介させて頂きます。
●【赤】
人の感情的興奮や刺激をもたらし、情熱的、活動的で元気と回復力を
与えてくれます。また、食欲を刺激する働きもあります。
警戒心、注意力を呼び起こす働きも与えます。
●【橙】
陽気で快活なイメージを与えます。赤色と同様に食欲を増進させる働きも
あります。マイナス的な部分で言うと、落ち着きがないイメージも
与えることもありますが、黒や暗い色と組み合わせるとエネルギッシュな
印象を与えます。
●【黄】
黄は光にもっとも近い色で、明朗で躍動的な働きを与えます。
膨張色で目立ち注意を喚起する色でもあります。
情緒不安定なイメージを与えてしまうこともありますが、
気持ちを前向きに元気にさせ、運動神経を活性化させる働きがあります。
●【緑】
爽やかさや平和的なイメージを与えるので、情緒が安定し、
身体を癒す効果を与えます。筋肉の緊張をほぐし、目にもやさしく、
ストレスをやわらげてくれるので、リラックスさせてくれる
働きがあります。
●【青】
寒色系の代表的な色である青は、爽快感、冷静なイメージを与えます。
精神を落ち着かせ、集中力を増す働きがあり、体感温度を低下させる
作用もあります。
●【紫】
上品で優雅なイメージを与えます。紫色も集中力アップや鎮静効果の
作用があります。古風で優雅な印象を与えますが、霊的・神秘的な
イメージも与えます。マイナス的なイメージだと孤独や不吉なイメージを
与えることもあります。使い方によって、上品にも地味にもなる色です。
◯【白】
清潔感や純真さを表す色で、どんな色と合わせても相性が良い色です。
配色を明るくクリアに見せる効果があります。
●【黒】
力強さや高級感を与える色ではあるのですが、
不安や暗黒、恐怖などのマイナスイメージも与えてしまう色です。
ただ、他の色との相性が良いですし、配色に黒が入るとダイナミックな
印象を与える作用があります。
●【灰色】
人工的で冷たい印象を与えますが、白や黒のように
はっきりとした色合いではないので、他の色と合わせ合わせやすい
部分もあります。
●【ピンク】
可愛らしさや女性らしさのイメージを与えます。
おだやかな暖かさの働きがあるので、円満な気持ちを与える色です。
●【ベージュ】
ライト・トーナス値の時にも説明しましたが、
人の肌や木を連想させ、精神をリラックスさせる働きがある色です。
人の筋肉を弛緩する効果があります。
●【茶色】
木の幹や大地のような自然を感じさせる働きがあるので、
気分を落ち着かせる効果があります。
■まとめ
今回は、様々な実験や統計から、色が人に与える影響について
お話させて頂きました。
日々の生活の中で、私達が思っている以上に、色から影響を受けている
ことはたくさんあるということが分かったと思います。
色彩の実験でのお話でもあったように、
暖色系と寒色系が与える「温度感」は色の感情的な部分で考えると
一番分かりやすいのではないでしょうか。
同じ室内の温度でも、赤いカーテンと青いカーテンでは、
赤色のカーテンの方が暖かく感じ、青色のカーテンの方は
涼しく感じます。中間的なイメージを与えるのが緑色となります。
また、食べ物の写真もイメージしやすいと思います。
全体的に明るくして緑色や青色を抑え、赤みを際立たせることにより、
美味しそうに見えます。
逆に青色は食欲を減退させるので、
ダイエットしたいなら、食用色素で食べ物を青くすれば良い
などの話題もありました。
美味しそうな写真にしたい場合は、赤みを意識すると
良いのですね。
ただの「色」として認識していた事でも、
色彩心理的には、人の心や気持ちに大きく影響を与えているのです。
もの作りに関わる人達は、色彩の特徴や与える働きを考え、
お店の中の配色や、商品やロゴイメージの色合いなどを決めている
場合が多いと思います。
この様な色彩が与える印象や働きを知った上で、
改めて様々な商品などを見てみると、見え方が違ってくるのでは
ないでしょうか。
企業のイメージカラーも、この様に色が持つ働きも考えつつ
決めている事も多いと思いますので、色彩の意味を当てはめて見てみると
どうしてその色彩にしたのかの理由も見えてくるかもしれません。
もの作りを行う方は、この様な色彩心理があることを
知っていれば、配色を決める時の足がかりになるのではないでしょうか。