サラリーマンをしていて、外周りの営業をしていて
「なんか損だな〜」
と思った事はございませんか?
お客様の下に訪問する時にはスーツを着用するのが
礼儀というものである教えられてますし、事実そのような側面があることも否めません。
また、お客様との商談を効率的に、効果的に、上手に成約へと導く為には
色々な情報を入手する必要があるので書籍を購入したり、時には接待と呼ぶに
等しいお付き合いや贈答品の提供などでお金を使っていることもあります。
そして、これらに掛かった費用の全部もしくは大半を営業をするサラリーマンが
自腹を切って賄っているということも少なくありません。
まさしく、自腹営業です。
この自腹営業による営業の負担は大きいものがあり、
サラリーマンの懐を寒くしている原因の1つでもあります。
そこで、今回はサラリーマンの懐を直撃している自腹営業に掛かる費用に関する
緩和策とも言うべき確定申告の「特定支出控除制度」についてお伝えします。
■ 自腹営業経費の緩和策1 特定支出控除制度の利用
平成25年度より「特定支出控除制度」の対象が広げられており、
その範囲の拡大はサラリーマンにとって非常に有り難い制度となっております。
特定支出控除とは、特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1(最高125万円)を
超える場合、その超える部分について、確定申告を通じて給与所得の金額の計算上
控除することができる制度のことです。
その中味を簡単に説明しておきますと、給与所得者が支出する下記に挙げる項目に
関して控除されることとなります。
1. 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
2. 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
3. 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
4. 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
(※平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も
特定支出の対象となります。)
5. 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために
通常必要な支出(帰宅旅費)
6. 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの
支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして
給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
(1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2) 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる
衣服を購入するための費用(衣服費)
(3) 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上
関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための
支出(交際費等)
中でも『6. 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円まで
の支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の
支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)』は、平成25年分以後に拡大枠として
適用されるようになった項目でこれが冒頭で例を挙げましたスーツ代であったり、
書籍代、接待費用などを網羅するもので、サラリーマンにとってはなんとも嬉しい
控除となっております。
ただし、これらの控除を受けるためには給与支払い者の証明と
確定申告をしなければいけません。
つまり、会社のために、仕事のために滞りなく職務を遂行するために自腹営業を行う
サラリーマンを救済する制度である一方で『職務に必要であること』を会社から
認めてもらわなければならないということがあるというわけです。
その為にもこれらの支出に関する明細書(領収書など)及び給与支払い者の証明書を
確定申告時に添付資料として提出しなければいけないことを覚えておいてください。
■ 自腹営業経費の緩和策2 会社からの認可がポイント
「特定支出控除」の対象と認められるためには、その支出に関する証明とその支出が
給与支払い者からの証明が無ければならないことは既に申上げたとおりです。
ただ、職務に必要かどうかは、その職務の無いようによって異なる事は言うまでもありません。
外周りの営業をする人間にはスーツが必要であることが認められることになりますが、
事務職に携わっている方で、且つ、会社から制服を支給されているのであれば
スーツが不要であることは言うまでもないでしょう。
書籍においても外周りの営業にとっては地図は必要不可欠なものと考えられるかも
しれませんし、事務職にとっては場合によっては辞書は必要不可欠なものとなるかも
しれません。
また、その対象が電子書籍であっても必要と認められれば「特定支出控除」の対象として
挙げる事に問題はありませんが、とは言え、その電子書籍を閲覧するために要する
パソコンやタブレット、スマホなどの機器関連がその対象となることはありません。
いずれにしても経費が掛かったことを証明する元となる領収書は必ず発行してもらうこと
とし、しっかりと保管しておくことで認められる認められないは別として申告できる
状態を保つことはできるので「これは!」と思うものはできる限り領収書を保管して
おくようにしましょう。
ここで新ためて整理しておきますと控除が認められる金額は特定支出の額の合計額が
給与所得控除額の2分の1(最高125万円)を超える場合、その超える部分について、
確定申告を通じて給与所得の金額の計算上控除することができることとなっております。
最高125万円を限度とすることとなっておりますが、
これは年収に換算すると1500万円を超過する方が対象となります。
ちなみに、給与所得控除の計算方法は下記のとおりです。
●年収65万円未満の場合
65万円が給与所得控除額
●年収180万円以下の場合
給与年収×40%が給与所得控除額
●年収180万円超〜360万円以下の場合
給与年収×30%+18万円が給与所得控除額
●年収360万円超〜660万円以下の場合
給与年収×20%+54万円が給与所得控除額
●年収660万円超〜1,000万円以下の場合
給与年収×10%+120万円が給与所得控除額
●年収1,000万円超の場合
給与年収×5%+170万円が給与所得控除額
では、上記の給与所得控除の計算方法を元に特定支出控除額の試算方法の簡単な例を
挙げてみますと年収が400万円の場合、給与所得控除は年収360万円超〜660万円以下に
該当する為、給与年収(400万円)20%+54万円となり、
試算すると134万円になります。
そして、この半額は67万円となりますから自腹営業で費やした費用が
67万円を超えた場合、その超過分が特定支出として認められる対象となります。
仮に、100万円の自腹営業をしてきた方なら100万円−67万円の33万円分が
超過分として認められることとなります。
【注意:『6. 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、
65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要な
ものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)』に該当する
特定支出は合計で年間65万円が上限とされております。】
この平成25年に追加された『6. 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を
超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に
直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)』によって
それまで認められていなかった資格取得物であったり、英会話などのスキルアップに
関する受講費なども勤務する会社が認めさえすれば問題なく特定支出として
控除対象となります。
つまり、ポイントは勤務する会社が認めるかどうかであり、その部分をクリアすることさえ
できれば自腹営業による負担も少しは軽減されるということです。
■ 自腹営業経費の緩和策3 とりあえず領収書の保管を
医療費の控除は10万円を超えなければその対象とはなりませんが、この医療費控除と
同様に特定支出控除も『給与所得控除額の2分の1(最高125万円)を超える場合、
その超える部分について〜』とあるように一定の金額を超えなければその対象とは
なりません。
そして、その対象となる自腹による特定支出の総額は1年を締めた時にしか分かりません。
だからこそ、来る確定申告に備え、スーツ代や書籍の購入費、接待交際費など特定支出に
該当するであろう費用の領収書は全てしっかりと保管しておくことが重要です。
特定支出に該当するであろうと申上げましたが、認められるかどうか定かでないものも
たくさんあるかもしれません。このようことも考えられる為、特定支出に該当する
しないに拘わらず一端領収書の類の物は保管しておくことをルールとしておくと
良いかもしれません。
せっかく特定支出の対象となり、わずかでも控除対象となるにも拘わらず
領収書がないばかりに、その控除が認められないのであればとても悲しいです。
まさしく自腹営業の辛さをまともに食らうこととなってしまいます。
では、ここで特定支出としてこれはOK。これは駄目。と言うものを見て行きましょう。
スーツ代を含む特定支出控除の衣服費として認められるものは、自腹営業を余儀なく
されているサラリーマンの場合、先程のスーツはもちろんのこと、ワイシャツや
ネクタイなどの費用も対象となります。
しかしながら、カジュアルな服装で外周りの営業をしているからと言って私服としても
利用できる(仮に私服として利用していなかったとしても)Tシャツであったり、
半ズボンであったり、また、ジーンズなどもその対象からは外れることとなります。
デザイナーなどのクリエイティブな仕事をされている方や昨今ではカジュアルな服装での
働き方を推奨している企業さんもありますが、残念ながら特定支出控除の衣服費として
認められないということになります。
また、定期刊行物を含む特定支出控除の図書費として認められるものは職務に
関連するもので勤務する会社が認めるものであればその費用は対象となります。
しかしながら、それが電子書籍の場合、閲覧する為のパソコンやタブレット、スマホが
必要になるわけですが、これらの閲覧する為のツールはその対象とはなりません。
最後に接待交際費用に関してですが、その対象は当然のことながらお客様や仕事の関係に
おいて繋がりのある方を対象として商事を共にするなどの接待費用であったり、
贈り物を届けるというような贈答品の類においてその対象となります。
しかしながら、注意しておきたいことは既に勤務する会社が接待交際費として
負担したものであれば自腹として認められないということです。当然のことですが。
あくまでも正真正銘“自腹営業”したことによる費用にのみその対象となることを
心得ておきましょう。
とにもかくにも領収書を保管しておかなければ認められるものも認められることとは
なり得ませんので、まずは領収書を保管するということをルールとして
定着させることをおススメします。
ということで、自腹営業からあなたを救う特定支出控除の利用についてお伝えいたしました。
長くなりましたので簡単にまとめておきますと、
1.衣服費や図書費、接待費も特定支出控除として認められるようになったこと
2.特定支出控除を受けるには領収書と勤務する会社から証明書が必要であること
3.それゆえに会社から認められることが大事であると共に領収書の保管が重要であること
これら事前準備をもって確定申告に臨めば、その対象となる金額を超過してさえいれば
いくばくかの控除を受けることができ、自腹営業の負担を少しでも軽くできますよと
いうことです。
もちろん、衣服費や図書費、接待費といった平成25年に新たに追加になった
費用だけでなく、それ以前からその対象となっている
1. 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
2. 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
3. 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
4. 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
(※平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も
特定支出の対象となります。)
5. 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために
通常必要な支出(帰宅旅費)
も当然のことながら含まれますのでご安心下さい。
これらの特定支出控除を大いに活用し、少しでも自腹営業による負担を
軽くしていただけたら幸いです。