独立・起業を考える場合に悩む事の1つとして
【法人】として事業をスタートさせるのか?
はたまた【個人事業主】として事業をスタート
させるのか?というものがあります。
以前であれば、【法人】として事業をスタートさせたいのであれば、
それ相応の資本金を用意する必要があったので、事業をスタートさせる際には、
まずは【個人事業主】から始めるのがごくごく一般的でありましたが、
昨今ではそのハードルが著しく低下した為に事業をスタートさせる
初めの段回から【法人】の組織を設立させてから始める方も少なくありません。
とは言え、まだまだ副業の延長線上に独立・起業があり、きちんと事業を
スタートさせる中の大半の方が【個人事業主】として始められます。
独立・起業をし、個人事業主として事業をスタートさせるにあたって、
この事業を始めるための諸手続きについては色々と調べる方が多いのですが、
一方で事業運営に必ず付きまとう税金についてはあまり調べることをしない方が
多いようです。
利益が出た時に考えればいいか・・・
ということかもしれませんが、せっかく独立・起業をし、思うように、
さらに言うなら思った以上に利益を出すことが出来たとしても、
いざ、税金を支払う段階になって
え?そんなに支払わなければいけないの?
手続きの仕方がよく分からないので放置していたら大変な事に・・・
なんてことになったら目もあてられません。
そこで、今回は、個人事業主の税金に関するもろもろを
「個人事業主」としての手続きから順追ってお伝えしていきます。
この記事の目次
■ 個人事業主として事業をスタートさせる為の手続き
個人事業主として事業の開業をする為には、その為の手続きをする必要があります。
まずは、「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出です。
この書類を管轄の税務署に届け出る必要があります。
(参考資料:「個人事業の開業・廃業等届出書」)
この届けは、事業の開始、廃止等の事実があった日から1か月以内に
納税地の所轄税務署長に提出することとありますので、
早く届け出るようにした方が良いです。
そして、開業する【だけ】ならこの「個人事業の開業・廃業等届出書」の届出をしておく
だけでもよいのですが、当然のことながら事業をスタートさせる為に開業するわけですから
このまま事業をスタートさせずに放置ということはないわけです。
そこで、「個人事業の開業・廃業等届出書」の届出と合わせてやっておきたいのが
「所得税の青色申告承認申請書」の提出です。
(参考資料:「所得税の青色申告承認申請書」)
こちらの届出は該当年度の確定申告の際に青色申告をするために必要で、
この届出を怠ると税制上、優遇されるもろもろを受ける事ができなくなります。
(詳しくは『サラリーマンが副業をする時に知っておきたい税務のいろは』を参照下さい。)
■ 個人事業主としてスタートさせることの税金面でのメリット
事業を始めるにあたって
個人事業主としてスタートさせた方が良いか?
法人を設立させたほうが良いか?
を迷う最大のポイントは、どちらの方が得か?(お金が残るか?)
というところにあります。
結論を言うと、まずは、個人事業主としてスタートさせる方がお得です。
なぜなら、最初の年は消費税が免税となるからです。
(売上が1000万円を超えると、その翌々年から消費税を払う必要があります。)
ただ、最初の年に消費税が免税となるのは法人設立の時も同じでこれだけだと実は
お得なことはないのです。しかしながら、ここからがカラクリとなっているところで、
売上が1000万円を超えた翌々年に法人化してしまえば、この時に法人としての
スタートを切ることとなり、法人化した初年度は消費税が免税となります。
さらに、個人事業と同じく、売り上げが1,000万円を越えると、その翌々年から
消費税を支払うこととなりますので、個人事業主としてスタートし、且つ、
途中から法人を設立させることで、合計4年間分の消費税が免税されることとなるわけです。
なので、一旦は個人事業主としてスタートさせることで
大きなメリット(優遇)があるということになります。
■ 個人事業主の課せられる主な税金
所得税
個人事業主はサラリーマンとは違い、確定申告後に自主的に納付する必要があります。
納付は確定申告書に同封されている納付書を使って金融機関から行いますが、
申請すれば銀行口座からの引き落としにすることもできます。
税率は超過累進課税という方式で、課税所得が高くなると 6 段階で税率が上がります。
(詳しくは以前に『副業における確定申告の方法はこれでOK!』で取り上げましたので
こちらを参照願います。)
住民税
所得税は国税ですが、住民税は地方税となります。
こちらもサラリーマンは源泉徴収ですが、個人事業主(給与所得者以外)は
送付されてくる納付書を使って金融機関で支払いを行います。
申請すれば銀行からの引き落としも可能。税率は、一律 10% です。
(内訳は市町村民税6% 、都道府県民税4% )
住民税は後払いなので前年度の課税所得によって税額が決まることとなり、
たくさん稼いだ年の翌年はたくさんの住民税が課せられることとなりますので
注意が必要です。
個人事業税
個人事業者独特の税金(サラリーマンにはありません。)
業種(事業を開始したときに都道府県税事務所へ届け出た時の書類に記載された業種)によって
税率が違ったり、課税されなかったりします。
なお、青色申告をしている場合でも、個人事業税に関しては青色申告特別控除が
適用されません。所得税の課税所得に青色申告特別控除額を足した額に対して
個人事業税が課税されます。
印紙税
領収書や契約書、株券などに貼り付ける収入印紙のことで、この収入印紙を貼ることで
印紙税を納めたという証拠になります。(消印も必要)
この収入印紙を貼付する規定は複雑ですので、詳細をお知りになりたい方は
下記を参照にされると良いです。
(参照:『収入印紙(印紙税)の知識+印紙税額一覧表』)
消費税
消費(購入)した金額に対して一定の割合で税金を納める形態の税金です。
(平成27年10月現在は8%)
消費税の課税対象は商品の代金だけでなくほぼあらゆる売り上げにかかってきますので、
報酬を受け取るときはきちんと消費税分を上乗せして請求しないと損をする可能性があります。
実際に納税する消費税額は課税売り上げの 8% から必要経費で支払った消費税額を引いた
額になり、売り上げが 5,000 万円以下の場合は「簡易課税」という方式が選択でき、
売り上げにかかる消費税から一定の割合を差し引くことで簡易的に消費税額を
計算することができます。
『個人事業主としてスタートさせることの税金面でのメリット』の項目でも申上げました
とおり、前々年の売り上げが 1,000 万円を超えていなければ、免税事業者として
消費税は非課税になります。
つまり、少なくとも事業を開始してから 2年間は消費税を払う必要はありません。
逆に請求する分に関しては消費税を上乗せして請求することはできますので
消費税分は丸々利益として残るということになります。
固定資産税(償却資産税)
土地や建物その他機械類、PCなどの機器など、償却対象となるものについては
固定資産税というものが掛かります。
(自動車に関しては自動車税というものがありますので固定資産税は掛かりません。)
固定資産税の計算方法は複雑ですので詳しく知りたいという方は下記を参照してください。
(参照:『償却資産の税額等の算出方法』)
購入金額が 10万円以上 20万円未満の資産については、 3年間で資産償却する
「一括償却資産」とすることで固定資産税の課税対象から外すことが可能です。
但し、青色申告で使える 30万円以下の即時償却の特例(こちらは購入年度にすべて経費化
できる)を使うと固定資産税の対象から外すことはできませんので注意が必要です。
ということで、個人事業主として事業をスタートさせるにあたり、
知っておきたい税金のことについてお伝えいたしました。
事業をスタートさせるということは、あらゆる責任を背負うことを決断することでもあります。
であるならば、できる限りその負荷は軽減し、早い段回で事業を軌道に乗せたいものです。
だからこそ、受けることができる税金の優遇面はしっかりと受け切ることも重要なのです。